赭鞭一撻(しゃべんいったつ)…牧野富太郎 若かりし頃の15の心得 @練馬区立牧野記念庭園の記事を書いているときに
赭鞭一撻(しゃべんいったつ)を🔍していたら…
高知県立牧野植物園で「赭鞭一撻」ノート売ってた~! のを見つけ
⇒「赭鞭一撻」ノート|牧野植物園ミュージアムショップ 思わずポチっとしてしまいました😃
そして届いた【赭鞭一撻】ノート
「赭鞭一撻」は植物学を志すようになった牧野富太郎が20歳の頃に書いた勉強心得です。
「結網子」は「結網(けつもう)」が牧野富太郎の号で、「子」は?
⇒「子」の意味について|Yahoo!知恵袋
表紙と裏表紙が牧野富太郎直筆「赭鞭一撻」のコピーになっています。
「赭鞭一撻」は15カ条あるのですが、この表紙には4つまでしか出ていません。
15カ条全ては表紙を開くと現代語訳で出ています。
表紙以外の部分は、まぁ普通にノートです。でも横罫です。表紙が縦書きだったから、縦罫かと思ったのに😅 でも私が縦書きで書いたのって、小学校の国語と作文ぐらい? あ、学級新聞とか、台本とかは縦書きでしたね。
「縦書き」で参考になったページ…
⇒作文のすすめ(15)縦書きと横書き|教育よもやま情報
⇒台本は縦書きと横書きどちらが優れているか|note 前田 拓也
あ、「国語 ノート」で画像検索したら、フクロウさんの表紙の国語ノートがあった!
だいぶ脱線してきましたね💧
【赭鞭一撻】ノートに縦書きしたい場合は、ノートを横向きにすればいいよね😅
え~と、赭鞭一撻に戻りまして、その内容を皆さんに知って欲しいのと、自分の復習を兼ねて、【赭鞭一撻】ノートに記されていた現代語訳を記しておきます🌿 縦書きじゃなくて、横書きですけど✎
赭鞭一撻(しゃべんいったつ)
一、忍耐を要す
──我慢することが必要である
何事においてもそうですが、植物の詳細は、ちょっと見で分かるようなものではありません。行き詰まっても、耐え忍んで研究を続けなさい。
二、精密を要す
──正確であることが必要である
観察にしても、実践にしても、比較にしても、植物を説明する文を作成するにしても、不明な点、はっきりしない点があるのをそのままにしてはいけない。いい加減で済ますことがないように、とことんまで精密を心がけなさい。
三、草木の博覧を要す
──草や木についての豊かな知識が必要である
材料(草木)を多く観察しなさい。そうしないで、少しの材料で済まそうとすれば、知識も偏り、不十分な成果しかあげられません。
四、書籍の博覧を要す
──たくさんの本を読むことが必要である
本に書いてあることは、昔から今まで世界中の学者の研究の結実です。出来る限り多くの本を読み、自分自身の血とし肉とし、それを土台に研究しなさい。
五、植学に関係ある学科は皆学ぶを要す
──植物に関係ある学科は全て学ぶことが必要である
植物の学問をする場合、物理学や化学(例えば光のせいで茎が曲がったり)、動物学(花粉を運ぶ蝶)、地理学(どこで、どんな植物が生えるか)、農学(有用植物の場合)、画学(植物画を描く場合)、文章学(植物を文章で表現する説明文)など、ほかの関係分野の学問も勉強しなさい。
六、洋書を講ずるを要す
──洋書を理解する必要がある
植物の学問は日本や中国よりも、西洋の方がはるかかに進んでいるので、洋書(西洋の本)を読みなさい(日本語や漢文の本ではだめです)。ただし、それは現在の時点においてそうであって、永久にそうではない。やがては我々東洋人の植物学が追い越すでしょう。[明治の初め頃の話]
七、当(まさ)に画図を引くを学ぶべし
──理屈にあった図画技法の勉強をしなさい
学問の成果を発表するには、植物の形や様子、生えている環境などを描写するのに最も適した画図の技法を学びなさい。他人に描いて貰うのと、自分で描くことはは雲泥の差です。それに加えて練られた文章の力を借りてこそ、植物について細かくはっきりと伝えられます。
八、宜(よろ)しく師を要すべし
──状況に適した先生が必要である
植物について疑問がある場合、本だけで答えを得ることはできません。誰か先生について、先生に聞く以外ありません。それも一人の先生だけではだめです。先生と仰ぐに年の上下は関係ありません。分からない事を聞く場合、年下の者に聞いては恥だと思うようなことでは、疑問を解くことは死ぬまで不可能です。
九、吝(りん)財者は植物学たるを得ず
──植物学者は、ケチではいけない
以上述べたように絶対に必要な本を買うにも、(顕微鏡のような)器具や機械を買うにも金が要ります。けちけちしていては植物学者になれません。※りん財者…ケチな人
十、跋渉(ばっしょう)の労を厭(いと)うなかれ
──方々の山野を歩きまわる努力を嫌がるな
苦労をいとわないで植物を探して山に登り、森林に分け入り、川を渡り、沼に入り、原野を歩き廻りしてこそ、新種を発見でき、その土地にしかない植物を得、植物固有の生態を知ることができます。しんどいことを避けてはだめです。
十一、植物園を有するを要す
──植物園が必要である
自分の植物園を造りなさい。家から遠い所の珍しい植物も植えて観察しなさい。観賞植物も同様です。いつかは役に立つでしょう。必要な道具ももちろんです。
十二、博(ひろ)く交を同士に結ぶべし
──多くの同好者と友だちになりなさい
植物を学ぶ人を求めて友人にしなさい。遠い近いも、年齢の上下も関係ありません。お互いに知識を与えあうことによって、知識の偏りを防ぎ、広い知識を身につけられます。
十三、迩言(じげん)を察するを要す
── 一般の人が使う名前や呼び名から推測することも必要である
職業や男女、年齢のいかんは植物知識に関係ありません。植物の呼び名、薬としての効用など、彼らの言うことを記録しなさい。子供や婦人や農夫らの言う、ちょっとした言葉を馬鹿にしてはなりません。
十四、書を家とせずして、友とすべし
──本に書かれていると安心せずに、本を対等の立場の友と思いなさい
本は読まなければなりません。しかし、書かれていることがすべて正しい訳ではないのです。間違いもあるでしょう。書かれていることを信じてばかりいることは、その本に安住して、自分の学問を延ばす可能性を失うことです。新説をたてることも不可能になるでしょう。過去の学者のあげた成果を批判し、誤りを正してこそ、学問の未来を明るくすることでしょう。だから本(とその著者)は、自分と対等の立場にある友人であると思いなさい。
十五、造物主あるを信ずるなかれ
──神を信じてはいけない
神様は存在しないと思いなさい。学問の目標である真理の探究にとって、神様がいると思うことは、自然界の未だ分からないことを、神の偉大なる摂理であると考えて済ますことにつながります。それは、真理への道をふさぐことです。自分の知識の無さを覆い隠す恥ずかしいことです。
練馬区立牧野記念庭園のパネルの赭鞭一撻を書き写し、
高知県立牧野植物園の赭鞭一撻ノートを書き写してみると、ほぼ同じなんですが、一字一句全く同じではないですね。
何が違うかというと、練馬区立牧野記念庭園のはパネル展示なので、それなりの大きさの文字で限られたスペースに15カ条を記載しなければなりません。そのために文字数が少なくなるような表現がされています。
一番差があるのは
五、植学に関係ある学科は皆学ぶを要す
練馬区立牧野記念庭園のパネルでは
『植物の学問をする場合、物理学、化学、動物学、地理学、農学、画学、文章学、数学などほかの関係分野の学問も勉強しなさい。』←これで十分伝わりますね。
高知県立牧野植物園の赭鞭一撻ノートでは…
『植物の学問をする場合、物理学や化学(例えば光のせいで茎が曲がったり)、動物学(花粉を運ぶ蝶)、地理学(どこで、どんな植物が生えるか)、農学(有用植物の場合)、画学(植物画を描く場合)、文章学(植物を文章で表現する説明文)など、ほかの関係分野の学問も勉強しなさい。』←ここで、お!となりました。
20歳頃の牧野富太郎は(例えば光のせいで茎が曲がったり)することを知っていたんですね!
そしてそれを物理学や化学と関連すると考えていたんですね! ←すばらしい洞察力です👏👏
⇒光屈性|Wikipedia
植物ホルモン(オーキシン)は、いつ頃から知られていたのでしょう?
⇒「オーキシン 発見 歴史」で🔍すると…
⇒ダーウィン親子予言の植物成長ホルモン「オーキシン」の生合成|理化学研究所
『オーキシンの研究の歴史は、進化論で有名なチャールズ・ダーウィンと、その息子フランシス・ダーウィンが、「植物の運動」という本(1880年)で、植物が光を感じて茎や根の成長方向を変えるのに重要な植物ホルモンが存在することを予言したことに始まります(オーキシンはギリシャ語の「成長する」という意味の言葉に由来します)。』←へ~ ダーウィン!
ところで、赭鞭一撻の『五、植学に関係ある学科は皆学ぶを要す』に「数学」は含まれていたのでしょうか?
練馬区版には「数学」があるんですが、高知県版には「数学」が無いんです。
赭鞭一撻の原文はどこにあるの?
⇒牧野富太郎自叙伝 第二部 混混録|青空文庫 にありました!
『 ○植学ニ関係スル学科ハ皆学ブヲ要ス
曰ク物理学曰ク化学曰ク動物学曰ク地理学曰ク天文学曰ク解剖学曰ク農学曰ク画学是皆関係ヲ植物学ニ有ス数学文章学ハ更ニ論ヲ俟ザルナリ』
「数学」ありました!
それより『物理学や化学(例えば光のせいで茎が曲がったり)』は『曰ク物理学曰ク化学』だけで、例えば…なんて書いてませんよ。
あ~( )内は「訳注」なんですね💧
赭鞭一撻に書いてあるように…
『書かれていることがすべて正しい訳ではないのです』
『不明な点、はっきりしない点があるのをそのままにしてはいけない。』
…ということで、自分が納得するまで🔍🔍🔍してたら、またまた長い記事になってしまいました😅
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